daikosh's blog

1日1アウトプット

11月11日。

 

11月11日。今日からちょうど百一年前に第一次世界大戦は終わった。元から知っていたわけではなく、たまたま今日NHKスペシャル『新・映像の世紀 第1集 第1次世界対戦・百年の悲劇はここから始まった』を見たため知ったのだ。正義とは何か。私はこの動画を見て考えさせられた。

 

まずはこの映像で取り上げられていたフリッツ・ハーバー博士を紹介したい。彼は窒素固定法という空気から窒素を取り出す方法でノーベル賞を受賞している。この研究により窒素肥料が容易に手に入るようになり、飢餓で苦しむ世界中の人々を救ったとされる。戦争が始まってからは、毒ガスの研究に没頭した。毒ガスの性能を確かめるために、自ら戦場にまで出向いて実験を指揮した。彼の同胞であったアインシュタインは、彼の研究を知り、こう言ったそうだ。

 

君は天才的な頭脳を間違った目的に使っている。

アインシュタイン) 

 

しかし、彼には彼なりの信念があったのだ。

 

毒ガスは戦争を早く終わらせ、ドイツの兵士を救うのだ。

フリッツ・ハーバー

 

ここで問いたいのは、彼の行いは果たして正義なのだろうかということだ。確かに彼が作った毒ガスは殺人兵器であり、何万人と人を殺すことになっただろう。それに、結果的に毒ガス開発は戦争を長引かせてしまった。しかし、彼の発言通り、毒ガス開発によって失われる命の数が減っていた可能性はないのだろうか。もちろんここで答えなど出せるわけがないのだが、正義について考える上で題材ではないだろうか。ちなみに悲しいことに、彼の妻であるドイツで初めて博士号をとった女性であるクララは、フリッツの考えに抗議しつづけ、ついには自殺してしまった。彼女の死を知った時、一体フリッツはどのような感情を抱いたのだろうか。

 

さて続いて取り上げたいのはイギリスの二枚舌外交である。WWI中、イギリスはオスマン帝国を倒すために、アラブ民族の独立運動を利用した。オスマン帝国は、様々な宗教、そして民族が混在する国であった。イギリスは、オスマン帝国を倒した暁には、アラブ民族の独立した国家をつくる約束したのだ。しかし、裏ではフランスとイギリスで領土を分け合う密約を交わしていた。終戦後、アラブ人国家は幻となり、イギリスはアラブ人を裏切った形となった。また一方では、ユダヤ人に対して、当時アラブ人が9割を占めていたパレスチナに、ユダヤ人国家をつくる約束をしていたのである。ここでも問いたい。イギリスの行った二枚舌外交は正義なのだろうか。上述の話だけ聞くと、明らかに裏切り行為で、悪だと考えることができるだろう。しかもイギリスの二枚舌外交が発端のきっかけとなったパレスチナ紛争や中東戦争は100年たった今もなお現実に続いている。しかし、もしイギリスが当時アラブ人を利用せずにオスマン帝国と戦争を続けていたらどうなっていただろうか。さらに泥沼な戦争となり、より多くの戦死者を出していたかもしれない。現実に「たられば」がないことは承知だ。しかし、我々は考える必要があるのではないだろうか。当時首相だったチャーチルはこんな言葉を残している。

 

殺すより盗むが善く、盗むより騙すが善い。(チャーチル

 

つまり、問題を解決する際に、軍事力を行使するよりも経済制裁をしたほうがよく、経済制裁をするよりも、騙したほうがよいと言っているのだ。これは政治、特に国際政治における考え方だが、日常生活に対しても適用できるのではないだろうか。暴力で解決するよりもお金で解決したほうがよいし、お金で解決するよりも騙して解決したほうがよい。ここで言う騙すとは詐欺という意味ではない。東洋哲学の記事で少し話したが、嘘も方便というマインドだろう。話をもとに戻すと、イギリスの二枚舌外交は悪であると単純に言い切ることはできないのだ。

 

今回は、フリッツ・ハーバーの毒ガスとイギリスの二枚舌外交を取り上げたが、それらを正当化しようとしているわけではない。見方を変えることができるということを示したかったまでである。またこの他にも例えばアメリカが日本に投下した原爆についても同様の考察ができるのではないだろうか。「原爆は大量の人を殺した。」「そんなものを投下したアメリカは悪である。」「原爆を作った科学者も悪である。」このように結果だけを見て判断するのは誰にだって簡単にできることだ。しかし、そのような判断で満足していてはいけないのではないだろうか。我々は思考停止してはならないのだ。

 

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