daikosh's blog

1日1アウトプット

『君たちはどう生きるか』を読んで。

 

昨日の記事でも少し触れたが、『君たちはどう生きるか』を読み終えた。オリラジのあっちゃんが話のざっとした流れと内容を動画で取り上げているので、読んでる暇がないという人には良いと思われる。また私が読んだものとあっちゃんの語っていた内容が少し違った点があったことから、おそらくあっちゃんは漫画版を読んだのだと思われるが、話の本筋や著者が伝えたい内容に影響はほとんどないと考えてよいと思う。

 

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さて、まずこの本の構成を紹介しておこう。主人公は中学1年生のコペル君であり、基本的には彼の学生生活が描かれているのだが、話の切れ目に「叔父さんのノート」というものが入る。どういうことかと言うと、コペル君が気づいたことや経験したことを逐一叔父さんに報告するのだが、その報告に対する返答という形で叔父さんの感想や意見がそのノートに述べられているのだ。つまり、コペル君の学生生活と叔父さんのノートが交互に現れるといった構成となっている。叔父さんのノートは合計で6つあるのだが、それらのエッセンスをまとめると以下の6点に集約されるはずだ。

 

・人間は主観的な見方に成りがちだが、客観的な視野を持つことが重要である。

・知識は人から教えてもらえるが、体験や感動は自分で経験することで初めて分かる。

・偉大な発見とは、先人が誰一人発見できなかったことを見つけることである。(従って、偉大な発見をするためには先人が何を発見したのかを勉強して、山の頂上に登る必要がある。)

・世界の大多数は貧乏な人であり、その人達がいることによって世界は成り立っていることを知っている必要がある。そして、自由に勉強ができるということは文字通り「有り難い」ことである。

・歴史上に偉人はたくさんいるが、偉大な人とは人類の進歩に役立った人である。

・人間と動物の違いは過ちを犯したという意識の有無である。

 

ご覧の通り、立派な人として生きる上で必要不可欠なことがぎゅっとまとめられているように思える。もちろんこのように箇条書されたものを読んだところで何の感動も生まれないので本を読むことをオススメするが、要約すると上のようになるということだ。

 

実はこの本は当時(1930年頃)子ども向けの哲学書として出版されたようだ。従って、哲学的な要素が多く含まれていた。例えば、知識と経験の違いの話だが、水分子は酸素と水素が1:2の割位で結合したものであるという「知識」を伝えることはできるが、冷たい水を飲んだときの感覚を伝えることはできないと言っている。これは、仏教の教え、悟りが知識では伝達不可能であるという考え方に非常に近い。また、盲目の人に赤という色を説明することもできないというたとえ話もしている。これは「クオリア」といった問題で未だに解決されていない哲学的な問いであり、科学的な問いでもある。他にも、上のまとめの最後の点についてだが、人間と動物の違いについて述べている。本書ではそれは「過ちを犯したという意識」の有無であると言っている。人間は自分のした行動をフィードバックし、罪悪感を感じたり反省したりすることがあるが、動物はどんなことをしたとしても、間違ったとは思わないし、ましてや反省などするわけがないということだ。この観点を少し変えてみると、人間は善悪の判断、すなわち正義を信じているということにならないだろうか。これはまさに直観主義の発想である。著者は、自分の信じている正義に従って行動しなさいということを言っている。例えば、電車で目の前にご高齢の方がいたのに、あなたは席を譲らなかったとした場合、電車を降りた後に、ああ席を譲ればよかったなと感じてしまったとする。著者は、このような経験を通して反省し、次からは譲れるように成りなさいということを言っているのだ。

 

この本を読みながら、今まで学んできた哲学の内容をこんなにも分かりやすく説明できるのかと驚かされたのと同時に、それぞれの考え方の説明の仕方を知り、さらに理解が深まった。子ども向けに書かれたものということもあり非常に読みやすい上、オトナとして最低限の教養というか考え方の基礎となることが書かれてあるので、老若男女問わずおすすめしたい一冊であった。