daikosh's blog

1日1アウトプット

初めて歌舞伎を鑑賞して。

 

先週、壽初春大歌舞伎を見てきた。人生で初めての歌舞伎であった。演目は『九十九折』、『大津絵道成寺』、『酒屋』の3つ。そもそも歌舞伎を見ようと思ったのはオリラジあっちゃんがYoutubeで解説していたのを見て、是非ライブで観たいと思ったのがきっかけである。

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詳しくは動画を見ていただきたいが、ここでは簡単に歌舞伎の歴史とその特徴を説明したいと思う。

 

まず大前提として、歌舞伎は庶民のものということを理解しておく必要がある。現在では、チケット代が高かったり歌舞伎役者が無形文化財に認定されたりしているためか敷居が高く、貴族や上級国民が嗜む古典芸能または教養といった印象があるが、元々は現代におけるテレビや映画、Youtubeのようなものであった。歌舞伎を演じる芝居小屋も現在は20軒しかないが昔は数千軒あったらしく、いかに庶民に愛されていたかが伺える。従って、最近のスーパー歌舞伎といったワンピースやNARUTOなども取り上げられているが、あれは至って自然な流れであり、歌舞伎業界の「庶民向けの歌舞伎」といった意向が見て取れる。他にも、歴史を観ていくと歌舞伎がいかに庶民的なものであったかが分かる。

 

元々、出雲阿国という女性が歌舞伎を初めたとされている。当時の歌舞伎というのは、派手な衣装で踊ったり演じたりするようなものだったそうだ。その後、女歌舞伎として、遊女が演じるようになった。現代におけるストリップのような感覚だろうか。上演後にお持ち帰りするようなビジネスモデルが出来上がっていたそうだ。そこで当時の江戸幕府は風紀が乱れるとのことで女歌舞伎を禁止したのだが、歌舞伎は美少年が演じる若衆歌舞伎と形をかえて生き残ったのだ。しかし、この若衆歌舞伎でもお持ち帰り商法が出来上がり、幕府に二度目の禁止を喰らう。そして最終的に、野郎歌舞伎というセクシャル要素なしの男性のみが演じる現代生き残っている形となったのである。このように、歌舞伎は江戸幕府から二度禁止されている上、財政再建及び幕府の権威復興が目的であった天保の改革では7代目市川團十郎は追放されているのだ。ちなみに、歌舞伎という言葉は「逸脱する」といった意味の「傾く(かぶく)」といった言葉が語源であることからも、由緒正しい伝統芸能ということではなく、大衆向けのものであったことが分かる。

 

歌舞伎の特徴として、2点だけここでは紹介しておく。まずは、歌舞伎は演者重視であるということ。同時代のシェイクスピアが脚本重視であったのに対し、歌舞伎は演者重視であるために、ストーリーを楽しむというよりかは演者のかっこよさや美しさ、技術力などを見て楽しむものだということだ。次に、歌舞伎と言えば、隈取(赤色や藍色の線が特徴的な化粧)をした歌舞伎役者が寄り目をしながら手を挙げて静止する決めポーズを思いつく人が多いのではないだろうか。これを「見得を切る。」というのだが、漫画の一コマのようにストーリーの一コマを現実世界で表現しているのである。従って、この瞬間は全演者が静止するのである。

実際に歌舞伎を鑑賞して、この「見得を切る。」シーンが見事だと感じた。「絵になる」とはまさにこのことかと思った。見得を切るのは何も主人公の決めポーズだけではなく、そのストーリーを決定づけるような重要なシーンで行われる。その情景を見ればその1シーンで何が起こっているのかが分かるのである。従って、歌舞伎は現代の漫画やアニメなどの源流と言えるだろう。現代のようなCG技術がない時代に、アニメや漫画などのフィクション風の演出を現実世界でいかに表現するかと考えた結果、今のような歌舞伎の演出が出来上がったのだろう。

 

ちなみに、男性の多かった江戸では荒事と呼ばれるヒーローものが多く、京都では和事と呼ばれる美形男性が主人公である作品が多いのだが、今回私が見たのはおそらく和事である。『大津絵道成寺』を除いて、『九十九折』と『酒屋』はそれぞれ恋愛モノと家族愛モノであった。従って、女形(男性が演じる女性)が出てくるのだが、その女形の美しさには驚かされた。彼等(彼女ら)の所作は見事で、一般女性以上に自然で美しく、江戸時代の女性はこのような振る舞いをしていたのかなあと想像を掻き立てられた。もちろん声は無理矢理高くしているため初めは違和感を感じたが、観ている間に気にならなくなっていた。また、いつの時代においても人間関係のトラブルが人気を博すのだなあと感じたのであった。日本人として一見の価値はあると思うので、まだ歌舞伎を観たことがないという人はなにかの機会に行ってみてはいかがだろうか。その際には、あっちゃんの動画を見て歌舞伎の予習をしておくとさらに興味深く見れるはずである。

 

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