芸術の定義。〜料理は芸術なのか〜
本日、3つ星レストランのシェフが不当に2つ星に降格させられたという理由でミシュランを提訴したというニュースがワイドショーで取り上げられてた。ミシュランの3つ星というのはかなり特別なもので、過去にも自殺者がいるほどである。
私はこの番組を見ながら、「そもそも料理を客観的に格付けするのには無理があるよなあ」と思ったわけである。ここで重要なのは「客観的に」という部分である。主観的になら、いくらでも評価することができ、順位もつけることができる。例えば、私にとってのNo.1つけ麺は「麺屋たけ井のつけ麺」である。この事実に対して誰も文句を言うことはできない。しかし、客観的にたけ井のつけ麺がNo.1であるということは言えないのである。
ここで私はふと芸術に関しても同様のことが言えるのではないかと思ったのである。この議論をする前に、料理は芸術に含まれないかという議論をする必要があるかもしれない。実はフランス留学中に行っていた語学学校で同様の議論はしたことがある。
当然だがフランス語の語学学校という性質上、様々な国籍を持った人々がいるため、このようなディベートではそれぞれの国柄や国民性が出るので非常に興味深く面白かったのを覚えている。自分の好きな言葉について話すときがあったのだが、私は「情緒」という言葉を挙げ、その理由として「論理的には説明できない日本人にしかない美的感覚であり、それを誇りに思うから」的な話をしていた。対して、あるロシア人のフランス語教師である40代ほどの女性が言った言葉が強烈に印象に残っているのだ。彼女は自分の好きな言葉として「論理」という言葉を挙げ、その理由として「この世の中、論理で説明できないものは無い」といったようなことを言ったのである。もちろんロシア人が皆が皆そういう価値観を持っているわけではないだろうが、私は「おおさすがロシア人、、、」と思ってしまったわけである。
話を戻そう。その語学学校のある授業で芸術の10分類というものが取り上げられた。その分類とはフランスの文化省が定めたもので、フランスでは一般的に用いられているそうだ。以下にその分類を示す。
1. le premier art: architecture
2. le deuxième art: sculpture
3. le troisième art: painting
4. le quatrième art: music
5. le cinquième art: literature, including poetry and prose
6. le sixième art: the performing arts, including dance and theatre
7. le septième art: film and cinema
8. le huitième art: "les arts médiatiques", including radio, television, and photography
9. le neuvième art: comics
10. le dixième art: video games, or digital art forms more generally
それぞれ順に訳すと、
1. 建築
2. 彫刻(彫像)
3. 絵
4. 音楽
5. 文学(詩や散文を含む)
6. 舞台芸術(ダンスや劇を含む)
7. 映画
8. メディア芸術(ラジオ、テレビ、写真を含む)
9. 漫画
10. ビデオゲームやより一般的にデジタルアート
となる。従って、この分類に従うと料理は芸術ではないということになる。もちろんこれは一つの分類の仕方であり、絶対的なものではない。
さて、その授業ではこの分類をベースに11つ目を提案するという取り組みを行ったのだが、「料理」が有力候補であったわけである。私もこれには賛成しており、料理は芸術の一種であると考えている。
こういった議論をしていると、そもそも「芸術の定義」は何であるかという話になるのが自然である。半時間ほどの議論の末、その時に出た結論としては「芸術とは感情を動かすもの」ということになった。つまり、あるものを鑑賞した時に「美しい」であろうと「気持ち悪い」などの負の感情であろうと、何かしら感じたのであればそれは芸術作品ということである。
(明日に続く。)