daikosh's blog

1日1アウトプット

芸術の定義。~芸術と技術の違い~

 

以前に芸術の定義についての記事を書いたわけだが、その続きである。

 

 

これらの記事の結論として、人間が作ったものが芸術作品であり、作ることを芸術というのではないか、といったようなことを書いたわけだが、これに対して以下のようなコメントを頂いた。

 

これはなかなか難しい議論でね、僕もずっと考えているのですが。artの語源はラテン語のarsにあって、これはどちらかというと「技術」、自然に対置される人間の技術というニュアンスですね。人工知能(artificial intelligence)のアーティフィシャル、はそこから来てるから、技術と芸術の境目って実は難しいですね。そういう意味でいうとdaikosh先輩のアイデアは語源に当たってる感じはしますね。artは人の手が絡んでるかどうかなんだろうね。

芸術の定義。〜アートの本質〜 - daikosh's blog - satoshi-hongoさんのコメントより)

 

このコメントを初め読ませていただいたとき、(技術も人間が行うのだから)技術も芸術に含めていいのではないかと思ったわけだが、このコメントの本質はそこではない。技術と芸術の境目はなんであるのかという点である。そこを今回は考えていきたいと思う。

 

ちなみに、上の記事を書く際に少しリサーチをしていたので、以下の記事を読んでartの語源がラテン語のarsということは知っていたのだが、話の流れが複雑になりそうだったので割愛していたことをばらしておく。

www.kitashirakawa.jp

 

 

それでは技術と芸術の境目はについて考えていこう。まず、今ままでの議論を整理してみよう。

 

・art(アート)は「芸術」という意味

・artの語源はラテン語で「技術」という意味のars

・art-という接頭語は人工的なといった意味

・ars(技術)は人の手が絡んだもの

 

もっと簡単にまとめると、

 

①ars(技術) → art-(人工的な)

②ars(技術) → art(芸術) 

 

のようになるはずだ。つまり、「人工的なもの」も「芸術」も元は技術であったと考えられる。このことから、ラテン語が使われていた時分には、技術と芸術は同じ扱いで、境目が無かったのではないかという考えに至った。つまり、人間がすることやしたことをarsと読んでいたと推測する。従って、現代でいう技術と芸術の境目を語源から考察していくというのはナンセンスということになるのだろう。

 

しかし、現代では「技術」と「芸術」という言葉は、同じ意味として使用されていない。そこで、私なりに技術と芸術の違いを考えてみた。前提条件として、技術も芸術も人の手が絡んでいるarsであるという元での提案になる。

以下が私の考えた区分である。

 

「技術はある目的のために利用するものであり、芸術はそれ自体が目的となるもの。」

 

説明しよう。

技術というのは、何らかの目的があってそれを遂行するために利用する。例えば、車を操縦するという技術には、車を操縦するという目的があり、その目的を果たすために役立つ。これは芸術の世界にも適用でき、絵を描く技術や楽器を演奏するという技術は、それぞれ絵を描くという目的と楽器を演奏するという目的が存在して、それらを果たすために利用するものとなる。

対して、芸術は何らかの目的のために利用するものではなく、それ自体が目的となる。例えば、上述のように、楽器を演奏するという目的は芸術であると言えるだろう。そして、その芸術のために楽器を演奏する「技術」を利用するのだ。反対に言えば、芸術は何らかの目的のために利用できない。何かを表現するために利用しているではないかと思うかもしれないが、何かを表現すること自体が芸術なのである。つまり、芸術の目的があるとするのであれば、その目的は芸術なのである。

以上をまとめると、「技術→芸術」というようなニュアンスだ。もちろん、必ずしも技術は芸術のために利用されるというわけではない。技術を利用するための目的は何でも良い。例えば、車の運転技術や速読できるという技術などの目的(車を運転するという目的と速読するという目的)は一般的に芸術とは呼ばれていない。

しかし、これらも芸術になる可能性を秘めていると言えるのではないだろうか。洗練された車の運転は美しく芸術的であるというようなことはおかしな発言にはならないだろう。また速読も、そのページのめくり方や姿勢などで芸術的な要素を感じ取れるかもしれない。このように、芸術というのはやはり客観的なものではなく、主観的なものである。

少し話がずれてしまったが、芸術と技術は似て非なるものであり、技術はある目的のために利用されるものであり、芸術はそれ自体が目的となるものというのが私の考えである。

 

以上、一提案でした。