daikosh's blog

1日1アウトプット

正しい処方箋を出すことと薬の与え方。伝え方。

 

マクロン氏はフランスが抱えている病に対して正しい処方箋を出しているものの、薬の与え方が間違っているからだ。

日本経済新聞(2020年2月12日)の社説より)

 

これは今朝の社説にあった締めの文章であり、うまい比喩だなと思ったので取り上げてみた。この社説では、フランスの現大統領であるエマニュエル・マクロン氏の政治活動を批評していた。昨年度に始まった黄色いベスト運動に引き続き、労働組合の反政府ストライキは未だに続いているようだ。

今回の記事ではフランス情勢の話ではなく、この比喩に出てくる「薬の与え方」の難しさについて話したいと思う。ここでいう薬の与え方とは、思いの伝え方と変換して差し支えないだろう。何事においても伝えるというのは非常に難しい。こうすれば必ず伝わるとといった「魔法のコトバ」は存在せず、状況や環境に応じて適宜考え出す必要ある。特に現代ではテキストメッセージを使うことで顔を合わさずにコミュニケーションを取ることが当たり前な時代であるが、その分誤解や勘違いなどが増えているはずだ。確か、面と向かって話す場合と言葉だけで話す場合では、誤解する確率が大幅に増加するといったデータがあったはずだと思ってググってみると、メラビアンの法則というものを見つけた。

 

言語情報(Verbal:7%):話の内容、言葉そのものの意味
聴覚情報(Vocal:38%):声の質・速さ・大きさ・口調
視覚情報(Visual: 55%):見た目・表情・しぐさ・視線

メラビアンの法則の誤解を解いて、伝える力を飛躍的にアップさせる方法より)

 

もちろんこれは限定的な環境下での実験から弾き出された値であるため、数字自体にはあまり大きな意味はないと思われるが、傾向は十分見て取れるだろう。ここで注目してほしいのは、視覚情報でさえも55%となっている点である。人間が意思疎通することがいかに難しいかを表している。このような話になった時にいつも思い出す言葉がある。それは神殺しの哲学者、ニーチェの言葉である。

 

事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。

フリードリヒ・ニーチェ

 

我々はどうしても「彼がこういう発言をした」という事実ではなく、直接「彼はこういう考えを持っているから彼の発言はこういう意味だろう」といったような思考をしてしまう。もちろんこれはおそらく人類が獲得してきた想像力という他の動物にはない特殊能力なのだろうが、これが返って大きな誤解を招くこともしばしば見受けられる。その一つの例が今回取り上げたマクロン大統領の話である。マクロン氏は正義感溢れるエリート中のエリートである。そんな彼の主張や政策に従っていれば、おそらくフランスという国は良い方向に向かうはずである。しかし彼の態度やキャラクターが国民からの反発を生み、そうさせないのである。正しい処方箋出しているだけではいけないのである。薬の与え方まで考えて、初めて立派な医者になれるのだ。

 

これは何も国のトップにだけ言える話ではなく、我々も念頭に置いておく必要があるはずだ。『伝え方が9割』というビジネス書が売れていたが、まさに薬の与え方についての本であろう。また今度読んでみよう。